私は、この逸話を『バッハの生涯と芸術』(J.N.フォルケル著/岩波文庫)で読んだので、バッハ先生も大王も大喜び! 長男フリーデマン、ノリノリで思い出話を語る!って感じで受け取っていたのですが…。
ネット上で読んでいると、いろんな解釈がある模様。
「フリードリヒ大王は、わざと難しいテーマを提示してバッハを困らせようとした」とか。
「バッハは6声のフーガを展開するように命じられたができなかったため、悔しくて、後日作曲したものを送りつけた」とか。
「フリードリヒ大王は、政治や戦争に忙しかったので献上されたものを一顧だにしなかった」とか。
どちらかというと、不穏なエピソードが散見されます…
実際のところはどうだったのか?
[G・ファン・スヴィーテンよりカウニツ候宛の手紙–ベルリーン、1774年7月26日]
彼〔フリードリッヒ2世〕は、私を相手に、何よりも音楽のこと、そしてたまたまベルリーンに滞在しているバッハ〔ヴィルヘルム・フリーデマン〕という名のすぐれたオルガニストのことを話題にしました。
ところで、この話題の芸術家は、私がこれまで耳にした限りでの、あるいはこうして今思い浮かべることができる限りでのことではあるけれども、和声法の知識の深さと演奏の卓越した技量という点において、ずば抜けた才能の持ち主です。
ところが彼の父親を知っている人々は、その彼も父親には及ばないと見ています。王も同じ意見です。そして、そのことを証明するために、王は自ら老バッハに対して与えたという半音階的なフーガの主題を声高に歌いました。
老バッハはこの主題から即座に4声の、ついで5声の、そして最後には8声のフーガを作ったというのです。
「バッハ叢書10バッハ資料集」角倉一朗/編、白水社/刊(p.218)
ことが起きてから四半世紀すぎた後になっても、当時のことをノリノリで話すフリードリヒ大王。ご満悦だった模様。
しかし、いくらなんでも話盛りすぎだよ、大王!
(実際は、即興で弾いたのが3声のフーガ。後日献上したのは6声のフーガ他。)
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